別に、私の好きな人が智明なわけじゃない。
ほかにいる。もっともっと、素敵な人が。
それは、智明も感づいているかもしれないけれど、智明にだけは知られたくない。
智明の性格からすると、絶対に面白がって邪魔したがるに決まってる。
「きーいー!」
ふと振り返ると、そこには隣の3組の友達、ゆりあがいた。
「ゆり!」
慌てて鞄を横にかけて駆け寄ると、ゆりあは満面の笑みでこう言ってきた。
「尾島くん、今好きな人いないんだって!」
尾島くんとは、尾島純也くんのことだ。
比較的大人しくて、あんまり目立たない存在かもしれないけれど、ルックスは確かだ。
背も高いってほどじゃないけれど、あの智明よりはある。
私はニコニコと笑顔を浮かべながら歩くゆりあの後についていった。
尾島くんは、ゆりあと同じクラス。つまり、3組。
だから、毎日のように、ゆりあについて行って通っているのだった。