…私は、捨てられたのかもしれない。


でも、この手帳を見る限り、


あの再会した時の反応を見る限り、



あの人は



お母さんは私を愛してくれてる。



ヒラっ…



手帳から、紙が落ちた。


[海鈴へ

会えて嬉しかったゎ。

あなたに私がお母さんだって言っても信じてくれないと思う。


私だって急に


お母さんがお母さんじゃない


なんて、言われたら焦るわよ。


でもね、これはほんとなの。


…ごめんね、今まで迎えに行かなくて…


なんだか海鈴に会うのが怖くて…


でも、一度会えばやっぱり、会いたくなっちゃって。


ごめんね…


こんな事、言いたくないんだけど…


お母さんね、


ガン見つかっちゃってね。


まだ、見つけるのは早かったんだけど…


奥の方にガンがあって…取れないらしいの。


…でね、ほんとに、こんなこと言いたくないんだけど…


あなたに怪盗ERICAになって欲しいの。


嫌なら良いわ。


絶対にじゃないから。


でもね、


これだけは知ってて欲しいの。


その家の宝石が本当にその家のモノとは限らない。


その家が表面上どんなに仲良さそうに見えても、


本当は会話もない、冷えきった家庭かもしれない。


そんな宝石を元の持ち主に返して欲しい。


そんな家庭から、子どもだけでも、助けてあげて欲しい。


…嫌なら全然構わない。


でも、もし、海鈴がやってくれるなら、


明日、鎌倉北公園で待ってるゎ。


母より。]


綺麗な字でそう書いてあった。



私はそれを握り締め、公園まで走った。