ウチの名前は、武田 喜子(たけだ としこ)。どこにでもいる、小学五年生の女の子。

顔は良い方と言われ、同クラスからはモテているらしいけど、ウチには彼氏がいる。二年生の男の子だ。
アイドルを目指し、芸能スクールで毎日レッスンをして、夢へと向かっているの。

今日もレッスンは行わる……。

「あめんぼあかいなあいうえお」
ウチは背筋を伸ばして、そう発声する。

「もう一度! 声は大きく!」
スクールの先生である女性にそう言われる。

「あめんぼあかいなあいうえお!」
負けじとウチも声を大きくして言う。
ぶっちゃけ、あまり意味がないとウチは思う。口答えするだけ無駄だと思うけど。

「はい! お腹から声を出してもう一度!」
先生は手を叩きながらそう言う。

同じ発声を良くなるまで続ける。それがこのスクールの教え方の様だ。正直、ウチはうんざりしている。