何だ。

さっきまで一言も話さなかったくせに。

仕事に行こうとしたら。

そう思いつつ、女の方に目を向けると。

女は下を向いたまま言葉を紡ぎ出す。

「この結婚に、疑問は無いんですか?」

「…」

急に、何を言い出すかと思えば。

疑問も何も、したく無い。

でも。

今はとにかく会社に行きたい。

「無いね。って言うか、むしろ興味が無い。考えてる暇が持ったいない。そんな事考えてる間に仕事がしたい。」

そう言うと、女は目を伏せる。

「…君に一つ言っておく事がある。」

女を、見下ろして。