そう言うと瑞紀は、決心したかのように息を呑んでから、俺を見て口を開く。

「…私達、夫婦なのに知らない事多過ぎじゃありませんか?」

急に、何を言い出すんだ。

だったらなんだ。

何も困る事なんて無いだろう。

「一週間前に会ったから当たり前だし、君と俺は政略結婚なんだからそれが普通でしょ。」

「っだったら、教えてく「その必要は無いよ。」

俺はゆっくりと椅子から立ち上がる。

「俺は君に関心も興味も無いし、そういう物をもつ予定も無い。」

「…」

「君に俺の事を知って欲しいと思わないし、知らす必要性も感じない。」

「…っでも、そんなんじゃ、仲の良い夫婦のふりなんて「さっき会社の事を教えたのは、必要性があると感じたから。これからも、必要があると思った事は教える。でもそれ以外は知らせたくないし、教えたくない。」

ゆっくりと

「…あの「それに、そんな事を言ったら君に聞きたい事だってある。例えば、君の両親の事、とかね。」

立ち尽くす瑞紀に

「…っ」

近づきながら。

「ねぇ、君、大事な事忘れてない?」

瑞紀の正面に立って、見下ろす。

「俺は、君に愛情を注ぐ気など無いって言ったはずだけど。」

その言葉だけを残して

俺は

瑞紀が立ち尽くす書斎を後にした。