続いてその隣にある部屋のドアを、こん、と一回ノックして。

「ここは、俺の部屋だから。」

その言葉に瑞紀がこくん、と頷く。

「必要な時は呼びなさい。」

「ありがとうございます。」

「で、この隣が君の部屋ね。」

瑞紀に目線を向けながら。

「はい。」

「…カーテン、最初からつけてあるやつだから嫌だったら変えなよ。」

これで説明は終わった。

面倒くさかった。

だから他人と同じ家に住むのなんか嫌なんだ。

そう思いながらリビングに戻ろうとすると。

瑞紀が、
「私の部屋の向かいにある部屋は、何なんですか…?」
と聞いて来た。

あぁ。

その言葉に、ゆっくりと体の向きを180度変える。

その部屋に向かって歩きながら。

「ここが、一番はリビングだけど、このマンションの中で二番目に広い部屋。その次が君の部屋、その次が俺の部屋で、一番狭いのが寝室ね。」

その言葉に瑞紀は慌てた様に
「私の部屋、知哉さんの部屋より大きいんですか…っ?!」

『知哉さん』

その言葉に少し眉を寄せる。

何で、この女に俺の名前を。

でも、さっき俺がそう呼べと言ったんだった。

しまった。

そう思いつつ。

「…うん。」

「そんな、良いです!気を使って「使ってないよ。」

食い気味にそう言って。

何が嬉しくてこの女に。

「たまたま余ってたのがその部屋だっただけだよ。俺がその部屋がよかったら君がくる前にとっくにそうしてる。」

俺がそう言うと。

瑞紀は眉を下げて、
「…そうですか。」
と言った。