「藍那」
「……空真。どうかした?」
「大丈夫か?」
「いつも言ってるでしょ?私は平気だよ」
「ごめんな」
「どうして、空真が謝るの?」
「彼氏なのに、何もできてないし…」
「私は、空真が離れないのならそれで幸せだよ?そんなの、関係ない」
「藍那…」
「ほら、本鈴だよ!また後でね」

彼女は、笑顔だ。
誰よりも辛いはずなのに、笑顔でいる。
それが、どれだけすごいことで…誰しもができることじゃない。
けれど、藍那はできる。
本当の自分を隠して、上辺だけの彼女自身を。

「藍那!ちょっといい?」
「先生。何ですか?」
「次の授業、欠課でも構わないか?」
「構いませんよ」
「悪いな」
「いえ」



「お前と話がしたくてな」
「話…?」
「たまたま俺が聞いちゃったんだよ。
藍那のことを話してる子たちのことを」
「聞き間違いじゃないですか?
私は何も言われてないし、何もされてませんから。気にすることないですよ」
「だが…」
「何を話していたんですか?」
「藍那をもっと傷つけてやるとか、いつまでこの学校にいるんだろうとか」
「話しているだけでしょう?私は何も言われてないので大丈夫です」
「本当か?」
「はい。なので、心配しないでください」