翔太くんを連れてクラスに戻ると、ちょうど人が引いたタイミングだったらしく、すんなりと中に入れた。
「はいはい!いらっしゃい…って、戸塚さん?」
制服にエプロン姿の田畑さんが私を見るなり目を丸くさせる。
そりゃそうだよね。
呼び込みに行ってるはずの私がお客さんとして来てるんだもん。
休憩中ならまだしも、まだ午前の部が終わる前。
「ちょっとちょっと、何サボっちゃってんの!そのスーツが売りなんやから、教室に来たら意味ないやろ!」
「う…ごめん。後でちゃんと巻き返すから、お願い」
チラッと視線を翔太くんに向けると、田畑さんが納得したような顔をした。
「あー…いいよいいよ。可愛いね、弟?」
「うん…まあ」
やっぱり、そう見えるよね。
私と翔太くんの後ろにいる大谷田さんにペコリと会釈をして、田畑さんが席に案内してくれる。
といっても、ただ机をくっつけただけの席。
小花柄のテーブルクロスのおかげで雰囲気は悪くないと思う。
「さ、何がいい?」
「あ、じゃあ私あんみつで」
ちゃっかり一番に注文しちゃったりして。
簡易メニューの写真に目移りしながら、翔太くんがうなる。
「とうちゃん、はんぶんこしよ」
メニューを大谷田さんに差し出して首を傾げる翔太くん。
「どれがいいの?」
「ようかん…とぜんざい」
「じゃあ半分こしような」
目の前で繰り広げられる親子の会話。
田畑さんがメモを取りながら口元に手をやっているのを見て、ときめいているのが私だけじゃないことに安心した。
可愛いよね…!