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各々の教室を回るたびに目を輝かせる翔太くんに手を引かれて、そろそろ1時間。
ずっと体勢を低くしているせいで腰が痛む。
代わってくれと大谷田さんに視線をやっても、興味深そうに辺りを見渡していて、気づいてくれなかった。
片手に技術工作部の木製のパンダみたいなのを持った翔太くんが私を見上げる。
「きょうかちゃんのクラス?ってどこ?」
「私のクラス?なら階段下りてすぐだよ」
「いきたい!」
そう言うと思った。
でも、呼び込みに行っているはずの私が男の子を連れて戻ったら驚かれちゃうし。
「…だめ?」
渋い表情の私を見て、翔太くんがしょんぼりした顔になる。
「だ…めじゃないです。行こうか」
そういう顔をするのはズルイって。
クラスの子に聞かれたらどう説明しようか。
あと1ヶ月後にはもう引っ越しを済ませて、私はここにはいない。
深影にも、風香にも工藤くんにも、まだ何も言っていない。
良いタイミングがいつかなんてわからずに、まだいいやって誰にも言えずじまいになっている現状。
そんな中で翔太くんを連れているところを見られたら、きっと深影達は黙っていないだろう。