「とうちゃん…?」
首を傾げる翔太くんが大谷田さんの袖をつかむ。
翔太くんに視線を合わせた大谷田さんが愛おしそうに目を細めたのを見て、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
家族に…なるのかな。
私は家族になれるのかな。
「鏡華ちゃん、だ。呼んでごらん」
「きょうかちゃん…」
ジッと真ん丸な目を向けてくる翔太くんと
家族に…なれる?
何も答えられずにいると、立ち上がった大谷田さんが私の頭を撫でた。
「大丈夫、ゆっくりでいいよ」
私だけに聞こえるように囁かれた言葉に、知らない内に強ばっていた体の力が緩む。
大谷田さんはお母さんのことだけじゃなくて私のこともちゃんと考えてくれてる。
息子である翔太くんを優先するわけじゃなくて、もう“家族”として見てくれてるんだ。