「ふぇ…っ」
「な、泣かないで!えっとほら、名前!名前は?」
顔を上げてくれないからわからないけれど、明らかな涙声。
泣かれたら今度こそどうすればいいのかわかんないよ、むしろ私が泣きたい。
なんとか体をよじって男の子と正面から向かい合う。
途端に抱きつかれたけれど、後ろからよりはずっといい。
一瞬だけチラッと見えた頬が雫で光っていた。
「…おおやだ…しょうた」
「しょうたくんね」
ん…………?
大谷田?
え、なんかすごい聞き覚えがあるんだけれど…違うよね?
まさかそんなはずないし。
でも私あの日ちゃんと聞いてたよ?息子さんいるんだよね、確か。
人見知りでなかなか会いたがらないから、今度写真を見せてくれるって言ってた。