人が大勢押し寄せる生徒玄関についた瞬間、風香が声を張り上げる。
「2―1!水ようかんに冷やしぜんざい、あんみつもありますよー!」
風香の声は行き交う人の視線を一瞬奪うほどによく響く。
途端にワッと歓声が上がって、なぜか小さな子供達が一斉に群がってきた。
「ふうちゃんだー!パンはー?」
「幸久くんが作っとるの!?」
「ふうちゃんの教室どこー?」
ニコニコしながら矢継ぎ早に言葉を繰り出すのは、町の小学生達。
夏休みに何度か海で見かけた子もいる。
「はいはい、今日はパンはないよ。幸久と深影と、他のお店の子たちもおるからね。2―1は2階の突き当たり。あとは看板見て行きな」
す、すごい…
私なんて、みんな話すのが同時すぎて半分も聞き取れなかったのに、風香は完璧に答えてる。