その後、お母さんは泣き出すし、大谷田さんは目の前でお母さんにプロポーズして大変だった。
ドッとのしかかる疲れを振り払いたくて、日が沈みかけた高台に登ってきた。
思いっきり伸びをして、吹き抜ける涼しい空気を肺いっぱいに吸い込む。
ここ数日ため息ばかり吐いていたせいか、久しぶりに空気を吸った気がする。
眼下に広がる入り組んだ町並みと、防波堤の先に見える大海原。
こんな綺麗な景色、他にないよ。
テレビや写真で見るような世界の絶景よりも、ずっと輝いて見える。
この景色を、色を、一瞬を、思い出に残そう。
またこの景色を見ることができますように。
オレンジと藍色が混ざったような空を仰いで、無数に散らばる星に願う。
あと、2ヶ月。
たくさん思い出を作ろう。
そうして、全部持っていくんだ。
いつかまたこの場所で、この景色を見られるように。
あ、違うか…
今日の空は明日にはないんだもんね。
じゃあ、またこの景色を見た時に、今日の空を思い出そう。
小さな左眼いっぱいに星空を閉じ込めるように、そっと目を閉じた。