「だから、再婚には賛成ですけど、引っ越しはしたくありません」


「鏡華…」


きっぱりと言い切ると、お母さんが悲しそうな顔をした。


そんな顔しないで、お母さん。


違うの、私ちゃんと考えたんだよ。


ずっと悩んでた、ううん、今も悩んでる。


それでもね、信じてみたいの。


大切な人達のことを。


「お母さんの幸せって何?」


真っ直ぐにお母さんを見て、問いかける。


お母さんを見ていたらわかるけれど、直接聞きたい。


そう思ってジッと待っていると。


「…鏡華と、賢也さんといることよ」


目に涙を浮かべたお母さんが、そっと大谷田さんを振り仰いだ。