すぅ、と大きく息を吸い込んで、口を開く。
「私は…この町に来て、知らなかったことをたくさん見つけることができました」
押し出された声は私が思っていたよりもずっと小さくて、震えていた。
知らないことが何なのかも知らないまま生きていた私が、この町で見つけた大切なこと。
その1つ1つを2人に伝える。
「大事な人ができました」
大事な友達、大事な縁。
唯一無二の、一生に一度と思える出会いもした。
深影の顔が脳裏に浮かんだ瞬間、どうしようもなく泣きたくなった。
「幸せなんです。今、すごく」
きっと、明日の方が今日よりも幸せなんだろうなって思う。
明日が羨ましくなって、待ち遠しくなって、朝が来ると共にまた明日が恋しくなる。
そんな日々を重ねて、今私はここにいる。