「あ…れ、他のみんなは、…?」
「先に行かせた 俺だけじゃ不満?」
イタズラっぽく笑う湊夜
朝の事は気にしていないのだろうか
それが心に引っ掛かった
「ほら、行くぞ」
「あ、うん!」
先に玄関を出る湊夜を追い掛けて
1日ぶりに外の空気を吸い込んだ
雲一つない晴天だった
横に並びながら道を歩いていく
先に口を開いたのは 湊夜だった
「家に帰らなくて…親は平気なのか?」
その質問に私はすぐに答える
「私、親いないから」
「…悪い。」
申し訳なさそうに俯く湊夜に
私は笑顔を見せた
「気にしてないから大丈夫だよ」
“気にしてない”
本当の事を言えば 嘘になるのかもしれない
でも そう思い込むしか無かった
「っ」
突然 手を暖かいものが包み込んだ
それが湊夜の手だと分かるまで
さほど時間は掛からなくて。
「深紗」
耳に入る 優しい声
私が湊夜の顔を見ると
真剣な表情でこちらを見つめていた
「俺は、傍にいるから…俺が、護るから」
「…どうした、の、湊夜…?」
腕をグイッと引かれて
私は湊夜の胸に飛び込んだ
「俺が、深紗を護るって…約束するから…」
「湊夜…」
真昼の街
道路の真ん中で 抱き合う男女
周りの視線は嫌と言うほどに感じる
それでも 暖かい温もりがとても心地良く思えた