「私を…護るって、そんな、たまたま助けて貰っただけなのに…駄目です!!」


私を護る?
それは この族を危険な目に合わせる事になる

ましてや私は翠月姫
その事実は危険度を増す事に 変わりは無い


「俺は、君を護りたいと思う」


「…っでも、!!」


「聞いて」


真っ直ぐに私の目を見つめる男に
吸い込まれていく感覚に 襲われる

あまりに真剣な眼差しで
私は つい言葉に詰まってしまった


「君を、護りたい」


“護りたい”

その言葉が あの日と重なった

そして 冷え切っていた心が
温められる…そんな気持ちになった


いつからか私は
“護られる”側から
“護る”側になっていたからーーーー


「…ッ…!?」

そして気付けば私は…

ーーーー涙を流していた



「悪い…っそんなに嫌だったか!?」


慌てて私は首を横に振る


「ただ…っ、嬉しくて、…っ」


そう ただ、嬉しくて
ただそれだけで涙が溢れた


そんな私を見て困った様に笑うと
男は頭を優しく撫でる


「名前は?教えて」


「花、舞…ッ深紗…です、」


「深紗、俺は君を護りたいと思ったんだ…駄目か?」


ハッキリと私にそう伝えると男は
もう一度 私の頭を撫でて 優しく微笑んだ


この人の手を取ってしまってもいいのだろうか

私は重い大きなものを背負ってる

それでも いいだろうか

そう考えた時に
“護りたい” その言葉が頭に浮かんだ

出会ったばかり
まだ何も知らない他人なのに

…この人なら信じられる
そんな気がした。


「…ッ」

嗚咽のせいで声が出ない
私は 小さく頷いてみせた