わたしは右側の階段に釘づけになっていた。


音の主を知りたくて、京香と貴志さんの騒ぎ声も、今は遠く聞こえる。


やがて、そこに現れたのはーー、


「社長。」


あの日のテノールの声。

白髪の、あの人だった。