京香の家は、門が開いても流石にお帰りなさいませとかいう人はいなかった。

わたしは内心、何にでも対応できるよう私の中の金持ちを極端にイメージしていた。


「今日は私がいるので、使用人はあまりいないですね。」

いつもはいんのかい。

…ほっとしたのに、碓氷さんが見事に私の安心を砕いてくれた。

と、その時。

「おお、京香!」

突然、エントランスの中央にどんと構える階段から声がして、わたしは顔を上げる。