｢……やめてください、父上｣


シュテファンボスが、相変わらず微笑んで、椅子に座ったルドルフボスの頭を撫でた～。


｢いいじゃないか、まだ子供なんだから｣


｢子供だから、嫌なんですよ｣


そう、ルドルフボスの正体は、子供なんだ～。現役バリバリの小学生という、驚きの事実だ～。


ルドルフボスは、褐色の短い髪をなでるシュテファンボスの手を払い除けようとするが、透明な手だから、うまくいかない～。オレから見たらほほえましいんだが、ゾルダートを束ねるボスが子供ってことに引け目を感じているルドルフボスは、子供扱いされるのが大嫌いで、自分のことも｢私｣で通し、威厳をつけるためにいつも眉間にしわを寄せているし、努力はすごいんだぜ～。


そんなルドルフボスに、オレたちは忠誠を誓ってる～。それは、シュテファンボスの愛息子って以外にも、ルドルフボスが、よく尖ったナイフのような冷酷さを持っていること、子供ながら武器の扱いにたけていること、今から将来が楽しみなほどのリーダーシップとカリスマ性を持っていることが理由かな～。


｢父上、塩を撒きますよ｣


ルドルフボスが、低くもったいつけた声で脅すと、シュテファンボスは顔色を薄く変えて、ふよふよと立ち去った～。まだ消えたくないんだな、とオレはとりあえず手を合わせておいたぜ～。


｢で、御用をうかがいましょうかね～｣


｢相変わらず不遜な口調だなセルジュ。まあいい。今日は頼みがあるんだ｣


ルドルフボスが、デスクの引き出しから一枚の紙を引っ張り出した～。だが、そのまま考え込む～。よほど重要な書類で、見せるのをためらうほどのものか～。オレの背中にさっと緊張の汗が伝わる～。


｢セルジュ。君を見込んで頼みがある。君にしかできないミッションだ｣


｢はっ｣


｢……一日でいい。私の｣


｢はっ、ルドルフボスの｣


｢……父親になってくれ！｣