「失礼します~。ボス、セルジュです~」


「入れ」


ボスの執務室に嫌々向かい、室内に入ったが、革張りのデカい椅子には、褐色の髪のナイスミドルな紳士が座り、冷酷な目でこちらを刺すように眺めている……はずだったんだが、今日は違った~。


「何やってるんですか、シュテファンボス~……」


透き通った姿のシュテファンボス(故)が、今日に限って昔のように椅子に座り、にこにこ笑いながら、オレを見ていた~!


「いや、たまにはいいかなって。懐かしいな、この雰囲気」


この人、絶対自分が幽霊だって自覚ないよね~!


「いや、シュテファンボス、オレたちゾルダート以外の誰かが入ってきたら、噂になりますから、やめてくださいよ~」


「私も言ったんだが」


微笑みがまぶしいシュテファンボスの陰から、ひょっこり姿を見せたのは、現ボスのルドルフボスだった~。


ルドルフボスは、シュテファンボスの子息で、シュテファンボスは幽霊になってから、最近ある事件を巻き起こしたあと(「アプフェル」参照)、ずっとこの部屋にとどまっている~。というと、怪談ものだが、ルドルフボスには何の影響もなく、かといって守るってわけでもなく、人畜無害なただの(失礼だけどな~)幽霊なんだ~。最初はレイ先輩あたりが怖がっていたが、今ではメンバー全員が慣れちまって、普通の光景なんだ~。でも、ゾルダート以外には極秘事項なんだがな~。絶対、この人、自覚してないな~。



「さて、と」


シュテファンボスが、スマイルを浮かべたまま、椅子をルドルフボスに譲ったあと、ルドルフボスが席についた~。


「ルドルフボス、いつもの人形はどうしたんですか~?」


「あれは修理に出した。壊れたんだ。昨日、椅子からずり落ちて、首が折れた」


ルドルフボスは、淡々としゃべる~。人形っていうのは、ルドルフボスが正体を隠すために、執務室の椅子に置いているマネキンのことで、よくできているから、ゾルダートのメンバー以外は、ルドルフボスは褐色の髪で背が高く、おしゃれなひげをたくわえたナイスミドルだと思っている~。


だが、実際は………。