「そこで、天野さんは少しだけ話してくれました。あなたの事を」


「……」


「2人は、一緒に住んでたんですよね……?」


「えぇ。彼とは小さい頃からの付き合いで、大学に進学すると同時に2人で上京して、2人でこの安いアパートを借りて住むようになったの」



そこまで話して、明来さんは黙ってしまい、俯いた。


私もかける言葉は見つからず、しばらく黙り込んだ彼女を見つめた。




「彼は……元気に、してた?」


やっと発された言葉は、あまりにも弱々しくて、胸が締め付けられそうになった。

「はい」と答えると「そっか」と安堵したように呟いた。



「彼が私のそばからいなくなって、もう15年も経つのね……。早いわね、もうそんなに……彩菜ちゃん、私、怖くてたまらないの……」



微かに彼女の体が震える。

ポタポタと、テーブルの上に零れる水滴。


明来さんが、泣いてる。