体が一瞬にして石のように固まった。
サァっと全身の血の気が引いていく。

この人懐っこい、明るい声。

ギギギ、と効果音がつきそうな動作で振り向く。

勿論そこにいたのは、


「き、ききき、木下君……」

「き多くないですか?」


クスクスと笑う木下君。
対する私は、引きつったように笑うだけだった。


「先輩もここの駅だったんですね。一緒に行きましょーよ」

「う、うん!」


つい返事をしちゃったけど、まだ心の準備ができてない……。

いや、でもこれは二人でいられる絶好の機会!
一緒に登校しながら話すっていう手もある!うん、そうしよう!


私がそう心に誓うと、電車が到着する予告のアナウンスが響いた。


『まもなく、各駅停車○○行きが――』


ホームも大分混んできた。

暗闇の中から、電車の灯りが見え始めた時だった。