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優しく微笑む顔も、恥ずかしそうに頬を赤らめた顔も、震える声で精一杯告白してくれた事も……。
思い出すたびに、なんだか嬉しい気持ちになってきてくる。
「……本当はすごくいい人そうなんだけどなぁ」
上の空でポツリと呟く。
すると、受話器の向こうから溜め息が聞こえた。
『……なに?もしかしてもう惚れちゃってるわけ?』
呆れたような瑠璃の声。
私は慌ててブンブンと首を横に振った。
「なっ、それはないよ!明日ちゃんと付き合えない事話す!」
ほ、惚れてるだなんて……!
そう思った瞬間顔がボッと熱くなった。
「ま、頑張んなさいよ。内気なあんたがどう振るのか知らないけど」
「う……」
毒のある言い方。それで困ってるから電話してるのに!
それでも、私の気持ちなどお構いなしに、
「じゃあ健闘を祈るわ。私パックの時間だから、じゃあねーんっ」
「えっ、ちょ、ちょっと瑠璃っ!?」
あっさり通話終了されてしまった。
焦って呼びかけても、マイクからはツー、ツー、と機械音が鳴るだけ。
まったく、他人事なんだから……。
そういう瑠璃のあっさりした所、少し尊敬しちゃう。
「……ふう」
私は携帯をしまい息を一つ吐くと、ベッドの上で横になった。
明日、ちゃんと振れるかな……。
不良だから躊躇っているんじゃない、一生懸命告白してきてくれたから戸惑っているんだ。
それでも、好きじゃないのに付きあうのは失礼だよね……。実際私は付き合っちゃってるんだけど。
もしかしたら2、3発は殴られてしまうかもしれない。
でもそれは自業自得だ。
私は明日しっかり謝ることを決断して、そのまま眠りに落ちていった。
――この先、とんだ大波乱が待ち構えていることも知らずに。