放課後、"木下晴(キノシタハル)"と名乗る男の子から呼び出された私。

木下君はほんのり頬を赤らめながら、真剣な眼差しで告白をしてくれた。

とても嬉しい筈のこの状況。
でも、内心で私はとても怯えていた。

私は視線を上にずらす。


「えっと……その髪は、天然?」


なるべく笑顔を保ちながら聞くと、木下君はころころ笑って


「まさか。染めてますよ」


と答えた。

あまりにもキッパリと言うものだから、思わず苦笑いが溢れる。

彼の髪は、天然では有り得ないと言える程の赤茶色……いや、赤だった。おまけに耳には沢山のピアス。
しかも、隠してるのかもしれないけれど……制服のポケットからタバコの箱が見えてる!


……私でも分かる。明らかに不良の類だった。


「俺と付き合って下さい!」

「ひえっ!?」


どうしようかと悩んでいた時、突然深々と頭を下げられて、ビックリしてしまう。

赤髪の不良さんが地味なおさげの女子に頭を下げている。傍から見れば、異様な光景だろうな。


「え、えっと……」


どうすればいいのか分からず、つい口ごもる。

こ、こういう時、どうすればいいの……?
とりあえず、断らなきゃ。付き合うわけにはいかないもん。

決死の覚悟をして口を開こうとした時、木下君が顔を上げた。


「……俺じゃ、ダメですか?」


木下君は子犬のような目で見上げてくる。
その姿に、思わず心苦しくなってしまった。





「だ、ダメじゃ、ないです……」