木下晴と榎木彩世が付き合っているという噂は、光の速さで学校中に広まった。
昼休みになった現在でも、学校の中はもうその話でもちきりだ。
「どんまい、彩世」
瑠璃ちゃんの綺麗な手が私の頭を撫でた。
一躍有名人となった私は廊下を歩くだけで「榎木彩世だ!」の言われ、クラスメイトの皆には距離をおかれて、なんだか変な気持ちだ。
「……どうしよう」
「ここまで広まっちゃあ、どうしたもこうしたもないわよ」
瑠璃ちゃんがごもっともな事を言う。
因みにまだ晴君には別れることを言っていない。我ながらヘタレ。
と、クラスの前に女の子ふたり組が来た。
そして私と目が合うや、
「あっ、見て!あの木下晴を尻に敷いて財布代わりにしてるっていう、暴走族長の榎木彩世!」
「こわーい!」
と言った。