でも、そんな疑問よりもっと先に気づかきゃいけない事があった。


しばらく複雑な気持ちで歩き続けていると、学校に近づいてきて、同じ制服の学生がちらほら出てきた。学校との距離と反比例して、私のドキドキは更に増していく。

それにしても、晴君は気づいてないみたいだけど、さっきから皆の視線がこっちに向いているような気がする。

すると、後ろから男子の声が聞こえてきた。


「あの女子、誰?木下晴と一緒に登校してるぜ?」


その瞬間、私の背筋が凍りついた。

勢い良く振り向くと、やっぱり後ろには男子が歩いていて、しかもバッチリ目があってしまった。

冷や汗をだらだら流している時にはもう遅かった、次々と嫌でも色んな言葉が耳に入ってくる。


「やば、あの子。木下晴と付き合ってるのかなぁー」

「きっと有名な暴走族の姫で……」

「てか、木下晴あんなおとなしそうなのがタイプなの?意外じゃね?」



「……先輩?どうしました?」



低くてどこか威圧のある声に弾かれたように上を向くと、晴君は犬のように首を傾げて私の顔を覗きこんでいた。


「な、何でもないよ!」


私は引きつる顔で無理やり笑顔をつくってそう言ったけど、何でもないわけがない。

意識が足りなかった。
私が今一緒に登校してるのは、『木下晴』君。


どんなに晴君が強くても、私みたいなのといれば皆からナメられちゃうかもしれないんだ。