ギイィ...
静かな保健室で先生の座る椅子が悲鳴をあげる。
生徒より五月蝿いんじゃないかな。早く買い換えた方がいいよ...これ。
「運良くあまり硝子が体に残ってなかったから病院行きは免れたけど、酷い重傷だから。暫くは家で。もうすぐ親御さんが迎えに来るからね。」
色乃くんは体中包帯でグルグル巻きだ。上半身は裸なのに服着てるみたい。
「...はい。ありがとうございます。」
色乃くんは眼帯をしていて、俯いていた。
真っ白な包帯に赤い血が滲んで、痛い気だった。
「じゃあ、先生ちょっと用事があるから出ていくね。担任の先生には言っておくから心配しないで。ちゃんと鍵閉めておいてね。神代さん。」
と、先生は私に鍵を投げ、去っていった。
「っはい!」
私は見事キャッチ!
焦るわー...
でも転入してきたばっかで...分かんない...
どーしよ。
私は鍵を握り締めた。
ガラガラガラ...
ドアが開く。
「あれ?神代ちゃん。どしたの?鍵、閉めとけって言われた?」
唐山くんだった。私から鍵を奪って、微笑むと...
「俺、閉めとくよ。」
そう言ってまた笑った。
「あ...ありがとう...!」
唐山くんが突然私を見つめる。
「神代ちゃんてさ、全然笑わないよね。」
私の頬を掴んで伸ばす。
「キャー柔らかい!お餅みたーい !」
唐山くんがはしゃぐ。うるせー。
「はいはい。」
私がテキトーに返事すると
「なんだ。つれない。」
そう、ぶっきらぼうに言った。
よく見ると唐山くんは肘を擦りむいていた。
「あ、唐山くん。肘...」
「あー気にしないで!大丈夫だから!」
と、言うとそそくさと絆創膏を貼り、さっき先生が座っていた椅子に座る。
ギィィィ...
また鳴る。
トス...
右肩に重さが増した。ふと右肩を見ると、色乃くんが頭を乗せていた。
ふわっと血の匂いがした。
「それにしても綺麗な髪だよね。」
私は唐山くんに話しかける。
「んー...でも、変わってるよな。」
さっきから怒ってるのか、声が低い。
なんで、怒ってるのかな。
「でも私、好き。この優しい色。」
私は色乃くんの髪を触りながら、話す。
「あ。笑った。...二回目だ。ちょー可愛い。」
唐山くんがガン見する。
「大袈裟」
私は目をそむける。
色乃くん、温かい。うとうとする。
「神代ちゃん寝るの?」
唐山くんが肩を叩く。
「...うん......ちょっとだけね。」

「なんだよ。いつも俺と話してるとき笑わないくせに。」
そう聞こえて、何かが私の頭を撫でた気がした。