唐山くんが止めに入ろうとする。私は止めた。
「ダメだよ。色乃くんの戦いだもの。」
私は笑う。唐山くんが深くため息をつき、倒れるようにして私の隣にしゃがみこむ。
「やっぱり、お前らって似てる。」
と、頭を掻きながら困ったように笑った。
ガシャン!
また大きな音がなった。
唐山くんが慌てて色乃くんを見る。私もつられる。
色乃くんがガタイの良いゴリラ男に硝子の上に落とされた音で、色乃くんの下に血が滲む。
痛そう...
「僕は...忘れないよ。君が僕の絵を破り捨てたこと。芸術を馬鹿にしたこと。...何より...」
周りが響めくのを無視して、色乃くんは続ける。
「僕の大切な友人を馬鹿にしたこと...!これだけは絶対許さない。」
色乃くんの瞳が強い光を受ける。柔らかな翠色が目に映る。
「...フン。今日は帰ってやるよ。せいぜい俺の前で足掻きな。」
ゴリラ男はそう捨て吐く。
すると...
「おい!待ちやがれ!」
唐山くんだ。馬鹿だな、勝てるわけない。
「はぁ?誰だよ。部外者は来るんじゃねぇ!」
ゴリラ男は叫ぶ。
「俺がそいつの大切な友人なのかは知んねぇが。俺はそいつをそう思ってる!」
唐山くんも叫ぶ。好感度上がるな...
「へぇ...かかって来いよ?」
ゴリラ男は嘲笑う。
唐山くんが拳をゴリラ男に振りかぶす。
その時ーー!
「やめとけば?唐山くん。」
私は唐山くんに笑いかける。あれ?私いつの間に...また体が勝手に。
「っ!神代ちゃん...危ないじゃん。」
「大丈夫だよ。私、こう見えて柔道少女なの。」
私が笑いかけると、ゴリラ男が私にパンチしてくる。
私は避け、伸びた腕を掴み、投げる。
ーー俗に言う背負い投げ(?)である。
ドシーンッッ!
地震のような音が校舎に響きわたる。
壊れそうだ。
「ぐっ...痛てぇ...」
ゴリラ男は懲りないのか、まだ立ち上がる。
すると唐山くんが私の前に立ち、近くの木の棒を手に取った。
「ここは俺が始末しとくから、下がってて。俺、これでも剣道少年だから。」
唐山くんはいつもの爽やかスマイルを放つ。
「ありがとう!じゃあ先に保健室行ってるね!」
私は走り出した。
「見てて欲しかったなぁ...俺の勇姿。」
唐山くんはまた1つ、大きなため息をついた。
でも、その口元は緩んでいた。