「……唯一あった居場所も、失っちゃった……。」



唯一、安らげたのは。


和泉くんの隣だけだったのに。



もう、いられない。

もう、いたくない。


こんなにも傷だらけで、汚い私なんて……。



「これ以上、和泉くんに知られたくない……。」



和泉くんは誰よりも優しくて。

和泉くんは誰よりも敏感で。

和泉くんは誰よりも可憐で。


和泉くんは誰よりも、綺麗だから。



綺麗、だから。



「私なんかといたら、汚れちゃう……。」



涙が止まらなくて。


足が一歩も前に進まなくて。



「倉橋、兄さんが待ってる。」



いつも通り、潤平くんが迎えに来るまで私は、ずっとそこにいた。



ポケットから落ちたものには、気づかずに。