とりあえず……。
「いいか? 僕は今から本を読む。千歩譲って、腕にくっつくことは許してやる。だが本の邪魔はするな。僕は読書の邪魔されるのが、大嫌いなんだ。」
「うん、分かった。」
やけに素直だな、と思いつつ。
僕は再び本の中の世界へと入る。
僕が読む本は大抵が難しく、文字でページが埋まっている本や、よっぽどの本好き以外手を伸ばさないだろうな、と思われる本ばかりだ。
成績は下から数えた方が早いコイツが、いくら読んでも理解出来ないと思う。
……なのにコイツは、僕の腕にずっとくっついたまま。
文句の1つも言わず、読書の邪魔も1度もしなかった。
本を見詰めては何度も小さく首を傾げ、意味が分からないんだろうに、僕に聞きもしなかった。