「……僕の家族、3年前に死んだんだ。」
「死んだ……?」
「正確に言えば、殺された。空き巣と僕に。」
突然の話に、私は目を白黒させる。
和泉くんが、殺した?
どういうこと……?
「こ、殺したって……。」
「……見殺しにしちゃったんだよ。」
和泉くんは足を止めて、道路の向こう側をジッと見つめる。
私も同じように足を止めて、和泉くんが見る方にへと視線を向けた。
「合気道という、立派な力があったのにさ……。……救えなかった。」
そこにあったのは、お墓。
「僕1人だけ逃げ出して、僕1人だけ……生きてしまった。」
青信号になった横断歩道を渡れば、当たり前だけど、それとの距離はどんどん近くなる。