でもその瞬間、頬に生温い何かを感じて。


……ソッと、その生温い何かを指で拭う。



「…………え……?」



指に付いたのは、赤い血だった。


誰の……?



「……かあさん……?」



顔を上げて、驚いた。



さっきまで僕がいた父さんの隣には、胸にナイフを受けた、母さんがいた。


たくさんの血が流れている。


僕の頬に付いたものと同じ、赤い血が。



「に、げて……そら……っ。」


「か、母さんっ、無理だよ!」



二人を残して、なんて……。


それに何より、足がすくんで……。



「良いから……にげて……。」



無理だ……、ダメだ……。



今、ここを離れたら、母さんが……父さんが……!


二人が……!!