side 和泉蒼空
いつから、だっただろうか。
人を失うことに、億劫になっていた。
大切な人がいなくなることに、怯えていた。
「蒼空っ……逃げてっ……!!」
その日は合気道の稽古があった日で、僕は夕方6時過ぎに家に帰って来た。
ドアを空けた途端に聞こえた、いつも優しい母さんの声。
視界に映ったのは、血を流して倒れてる父さんと、ナイフを持った見知らぬ男。
……何が起きているのか、分からなかった。
「とう、さん……?」
息はかろうじてあるようだけど、意識は無い。
僕は直ぐさま、父さんに駆け寄った。
「父さん!! 父さんっ、どうしたのっ? ねぇ、父さん!」