side 和泉蒼空
「それが、アイツの暴力の理由だって言いたいのか……?」
「……あぁ。」
松江が少し、気まずそうに頷いた。
大河内は顔を伏せて、涙をひたすら流している。
……世の中の恋愛の内。
どれだけの恋愛が、幸せに包まれているのだろうか。
何の支障も無い、柔らかく甘い恋。
嘲笑が漏れる、ありえないほどの呆気ない恋。
いくら願っても叶わない、切なく残酷な恋。
どれだけの恋愛が幸せで
どれだけの恋愛が不幸せ?
僕は唇を噛み締めて、おそらく不幸せに部類されるであろうその恋の残酷さを、痛感していた。
「兄さんはずっと……自分から、しずくを連れ出してくれる人を探してたんだ。」