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 キスされる―――‥


 そう思ったが中々その気配は感じない。

 その代わりに額を軽く叩かれた。


 『痛っ……』


 目を開けると彼はイタズラが成功したときの表情。


 「嘘だよ」


 そう言って彼は元の位置に戻り何事も無かったかのように再度雑誌を読み始める。


 『……』


 私が彼を意識しだしたのはこの時かもしれない。



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