色んな一面が見れた今日。夕方。アパートへの帰り道、一つの場所へと寄る。少し小高い丘の上にある公園。訝しげに俺を見つめる美由の手を取り公園の中を歩いていく。

 公園の奥の奥。どんどんと進んで行くと開けた場所に出た。


「…………っ!! うっ……わぁ……!!」


 視界に広がったのは、今日別の場所で見たような街並み。だけどあの時よりももっと建物が遠くに見えて、人が歩いてる姿も全く映らなかった。


「そろそろ暗くなるし、夜景も見えるぞー」
「よくこんな所知ってたねー!!」
「穴場スポット。結構いい所だろ?」
「うん!!」


 柵に掴まり目をきらきらと輝かせる美由の頭を優しく叩き、俺も同じように景色を見る。
 まだ夕方。だけど日は、公園を歩いているうちにだいぶ落ちていた。あと少しで夜が来る。闇に染まって美由の顔が見えにくくなる、その前に。


「美由」


 柵に寄り掛かり、彼女の名前を呼ぶ。街を眺めていた彼女はこちらに首を向けると、俺と視線を交わした。


「んー?」
「好きだよ」
「私も好きだよ? なーに? いきなり」
「ははっ、ごめんごめん。……だから――……」



『ほら、目覚ましてよ』



 ――彼女の声が聞こえる。ぱっと目を開けると、自分の家のベッドだった。
 外はもう明るい。身体を起こして時計を見ると、まさかの午前十一時。今日が休みだったからいいとはいえ、昼前まで寝ちゃうくらいに疲れてたっけ、俺。


「……はぁ」


 思わず溜息が零れる。太ももに肘を乗せ、額に手を当てると目を閉じた。

 ……また、夢を見た。あの頃の夢。あいつが俺の隣にいて笑ってくれている夢。そして、いつもと同じように、あの場所まで来ておいて、いつもと同じように、あの言葉が言えないまま終わる夢。

 あの時はあいつに言えた言葉。夢の中では絶対に言わせてもらえない。きっと、言うだけ無駄だって自分で思ってるからなのかな。


「……美由」


 額に当てていた手で握り拳を作りながら、名前を呟いてみる。だけどこの行動に意味はない。だってここにはいないんだ。どこにもいないんだ。言葉も声も想いも届かない。なんで、なんで。


「っ……美由……!」


 なんで、お前の姿は俺に見えない。


セパレートアンプは直らない
(だからお願い。僕の傍にいてくれないか、君が好きだから)

song by AM11:00