「あのね……、明日西高と合コンするんだけど、こっちの人数が足りなくて……。詩乃、来てくれないかな?」
……やっぱりいつもと同じ話だった。
もう。
美夏は一体いつもどこでそんなに合コンの話を拾ってくるの?
つい先週も同じこと頼まれたよね、私?
「……美夏、私は」
「ごめんね、分かってるの!詩乃にはちゃーんとカレシがいて、合コンなんか行ったって何の得もないってこと!でも、詩乃がいてくれたら私も心強いし……!
ただ座ってくれてたらいいから!来てくれるだけでいいから、お願いっ!!」
私の言葉を遮った美夏は、パンッ、と顔の前で手を合わせてそう言ってきた。
その美夏の仕草は必死そのものだったから、思わず「いいよ」と頷いてしまいそうになったけど、すんでのところで思いとどまる。
危ない危ない。
一度でも情に流されて受け入れてしまったら、きっとこれから美夏は、初めから私のことを合コンの頭数として数えるようになるだろうから。
「ごめーん、美夏。やっぱりフリーのときにしとくね、そういうのは」
眉尻をさげ、ごめんね、ともう一度言うと、美夏はしばし私の顔をじっと見つめてきたけれど。
「……そっかー。わかったよ。気が変わったらいつでも言ってね?」
私が首を縦にふることはないと分かったのか、残念そうにそう言い残して生徒会室を出ていった。
ガラッ、とドアが閉まった音と同時に、私は思わず小さく息を吐いた。
美夏の勧誘は数は多いけど、それほどしつこくないから、断るのに労力がかかるわけじゃない。
とはいえ、仲のいい友達の頼みを断るのは、それなりに気を遣う。