────微かに。

だけど、たしかに。


今度は、囁いた唇が、かすめるように耳に触れた。



付き合ってるふりをしたらいい。

竹内はそう提案していたはずなのに、囁かれた言葉はなんだか少し違う意味に聞こえるのは気のせい?


そんなはずないのに、好きだ、って言われてるみたいに感じてしまう。

……うん、絶対そんなわけないのに!


そう思うのに、胸の奥がきゅんと鳴いて。

……おかしい。




「……ね。詩乃」



どちらかというと苦手だったはずの彼。

なのに、名前を呼ばれた瞬間。

自分でも不思議なくらい、心臓がドキンと大きく跳ねた。


ああもう、ホントにおかしい。

竹内は、私のウソに付き合う、って言っているだけ。

協力しようとしてくれているだけ。

それだけなはずなのに、どうして私、こんなに動揺してるの?