「生徒と教師の恋愛は教師側のリスクが高すぎる。学校に知られて職を失うことだってあるの。あたなにそれがどんなに大変なことかわかる?」
「わたしは別にそ……桐生先生に恋愛感情を抱いているわけじゃない」
ーーー考えたこともなかった。
「へぇ……恋愛感情じゃないにしても……何か他の生徒とは違う関係性がありそうね」
わたしのこの気持ちが蒼ちゃんの人生を台無しにしてしまうかもしれないなんて。
ううん、考えたくもなかった。
幼なじみのわたしたちでも、教師と生徒の壁は超えられない。
叩きつけられた現実に反論の言葉が見つからなかった。
「神崎先生、それくらいにしてあげてください」
何も言えなくなったわたしの代わりに、蒼ちゃんが言った。
ずっと何も言っていなかった蒼ちゃんはいったい何を思っただろう。
そんな真面目な顔をする蒼ちゃんとは反対に、
「いじめすぎちゃったかしら?じゃ、あたしはこれで」
クスリと笑うと余裕そうに神崎先生は教室を出て行った。
神崎先生があんな人だったなんて知らなかった。
裏の顔ってやつなんだろうか。
大人になればいつかわたしにもわかる日がくるの……?