わたしがいつも見ている神崎先生は嘘つきで、今のが本当の姿。

自分を偽って、蒼ちゃんに手を出して、許せないことで溢れてる。


「好きでもない人にキスするなんて変だよ」


呟くように自然と言葉が出た。

好きでもない人にキスをするのってどんな気持ち?


「お子様にはまだわからないわよね」


わたしが子どもだから?

大人はみんな好きでもない人にキスができるの?

蒼ちゃんもそうなの?


それともーーー。


「あっ、もしかしてあなた桐生先生のことが好きなのかしら?」


「………!」


図星をつかれてビクリと肩が揺れた


「な、なにを……」


まだ自分から伝えられてないのに、蒼ちゃんの前でそんなこと言わないでよ。

そう言ってやりたいのに、言えない。

ただ顔が赤くなるばかりで、反論の言葉は心の中でしか出せなかった。


「赤くなっちゃって可愛い〜。いいわね高校生は」


これが大人の余裕ってやつなのだろうか。

わたし見下すように笑う姿は“いつもの神崎先生”の面影が少しも感じない。