あんなにわたしを嫌っていた蒼ちゃんが探しに来てくれるなんて、いったい今どんな気持ちなんだろう。
蒼ちゃんはどんな気持ちでわたしを探しに来てくれたの……?
格好は学校で見たときと同じスーツ。
鞄も学校で持っていたやつだ。
お母さんから聞いて急いで来てくれたのかな………。
「はい。俺が責任もって海里を家まで送りますんで、それでは」
さっきから蒼ちゃんはわたしのことを「お前」ではなく「海里」と名前で呼んでくれている。
戻ってきてから名前で呼んでくれたことなんてなかったのにどういうことだろう。
蒼ちゃんが「海里」と呼ぶたびにドキンと心臓がうるさいんだ。
「そ、蒼ちゃ……………」
通話を終えた瞬間、すぐに声を掛けようとしたが、
「こんなとこで何してたんだよ」
蒼ちゃんの声と重なり、わたしの弱々しい声はかき消されてしまった。
「なんで家に帰らなかった」
「えっと、それはーーー」
無意識に来てしまったとはいえ、理由はもうわかってる。
昔から“そう”だったから。