「俺さ、海里が隣に居てくれるのが当たり前だと思ってた」
少しの沈黙を先に破ったのは蒼ちゃんだった。
落ち着きのある真剣な声が波の音なんかより、ずっと大きくわたしの耳に響いている。
「ずっと昔から一緒で、海里は俺の妹同然で」
「…………うん……」
“妹”と言う言葉に胸がズキンと痛む。
わかってたけど、やっぱり辛いよ。
所詮わたしは妹という壁を越えられない。
どんなに年を重ねたって、同じように蒼ちゃんも変わっていく。
距離が縮まることはこの先一生恵んでなんかこないの。
「海里も俺を兄みたいに慕ってくれたことが本当に嬉しかったよ」
わたしが蒼ちゃんを“兄”だと思っていたのはほんの少しだけだよ。
蒼ちゃんは知らないだろうけど、わたしはずっと蒼ちゃんをひとりの男の子として見ていたもの。
好きになったのだってずっと、ずっと、早いんだ。
言いたい気持ちを押し殺して、最後まで蒼ちゃんの言葉を聞くべきだ。
怖いけど、そんなのいつものこと。
本当は蒼ちゃんに想いを告げるのは不安で仕方がないの。