残り少ない高校生の一瞬、一瞬を本当に大切にしたいと思う。
見慣れた校舎内も、結衣と一緒に歩いた帰り道も、全部大切な宝物。
「それでさー、昨日お母さんがね…………」
「えー?何したの」
弾むようにテンポがいい会話をする毎日も終わってしまう。
結衣は県外の大学に行くため、卒業してもなかなか会うことが難しい。
高校と一緒に結衣ともしばらくお別れ。
「じゃあね、海里!」
「うん、また明日」
別れ道で手を振り、歩く結衣の後ろ姿を名残惜しく見つめた。
「また明日」なんて言葉を言えるのもあと数日。
結衣と別れた後も、家に帰ってからも、卒業のことで頭がいっぱいになる。
別れるのは結衣だけじゃない。
クラスの友達とも、遥とも会えなくなるんだ。
もしかしたら蒼ちゃんとだって…………。
ふと顔を目線を下に向けると、部屋の床に投げ捨てていた鞄から、キラキラ光るものが見えてくる。
蒼ちゃんから貰ったシーグラスのネックレスだ。