東京の大学へ進学すると決めた時は少し心苦しかった。
海里が哀しむのがわかっていたから。
海里と離れるのは俺も辛かったから。
それでも自分の夢を叶えるため、海里を突き放すようなことをしたんだ。
1人でも頑張れるように。
1人でも頑張れるために。
海里から貰ったシーグラスは行き詰まってしまった時のお守り。
俺の背中を押してくれる大切な物。
そして、教師になる夢を叶え、海里との約束を果たすために地元へと戻ったんだ。
「は?人なんて年月過ぎれば変わるもんなの。アホなところが変わらないお前がおかしいだけだ」
海里のことを守るために放った数々の言葉。
本当は苦しかった。
海里を守る方法がこれ以外思いつかなかった俺が子供だったんだ。
「蒼ちゃんこと大好きだよ」
だけど、海里はそんな俺を許してくれた。
海里を傷つけることしかできない俺でも好きだと言ってくれた。
たぶんこのときから海里を“女の子”として意識し始めていたと思う。