「辻宮?ぼーっとしてどうした?」
「あ、いや、なんでもないです」
そうだ、考え事してる場合じゃない。
蒼ちゃんが目の前に居たんだ。
「次何食べようかなって、考えてて………」
「ははっ、食べ過ぎて太らないように気をつけろよ?」
「ふ、太るほど食べません!!」
いたずらっぽく笑う蒼ちゃんの表情。
どんな蒼ちゃんも大好きだ。
「桐生先生はーーーー」
「かーいーりっ!」
「うわぁ!?」
上機嫌な声とともに、誰かの手が首に巻きついてきた。
誰かって、そんなの本当は声ですぐにわかる。
「はっ、遥?」
「急に走ってくなんて反則。置いてけぼりにすんなよな」
「ご、ごめん………」
遥とこんなに体が近いのは、出会ったばかりの日以来かもしれない。
目の前に蒼ちゃんがいるのに……なんだか……。
勘違いとか、されそうだよ。