バタバタと足音が離れて行くと「はぁ〜…」と大きなため息をこぼす遥。


「大丈夫……じゃないか」


「ま、まぁな…………」


どうやら遥は女の子たちから逃げ回ってここに辿り着いたとみて間違いないだろう。

モテすぎるっていうのもやっぱり大変なんだな。


「それで……遥はなんでそんな格好してるの」


遥はなぜか制服ではなく学ランを着ている。


遥のクラスはたしか焼き鳥とか焼きそばとかそんなのじゃなかったっけ……?

どこに学ラン要素があるというのだろう。



「客引きだーってクラスの女子たちに無理やり着せられたんだよ。ったく迷惑なヤツら」


なるほど。

そしたらお客さんが来すぎちゃって逃げてきたってところかな。

さすが遥、相変わらず恐ろしいくらいのモテってぷり。


「まじダルすぎ。なんで俺がこんな格好………」


ブツブツと文句が絶えない遥だが、こんなことを言うのはわたしの居る前でだけだ。

口の悪さもいつもと変わってないや。


そんな疲れ切った遥を横目に、


「芹澤……くん………?」

結衣が同じ空間に居たことを忘れてしまっていた。


「ゆっ……」


そうだ、隣には結衣も居たんだ。

遥もようやく気がついたみたいで目をギョッとさせている。