「海里は装飾担当でしょ?早くこっち来て手伝ってよ」
「はーい」
結衣ったら文化祭の実行委員だからって気合い入りすぎだよ。
床に転がっている大量の風船を膨らましたのはほとんど結衣だ。
ブツブツと文句を言いながらも膨らんだ風船を壁にペタペタと貼り付けている。
ようやくわたしも重い腰を上げ、結衣の隣で風船を壁へとくっつけた。
そういえば遥のクラスは何をやるんだっけなぁ。
芹澤くん……いや、遥と神崎先生が離れたあの日から随分と季節が変わった。
前のような恋人未満というわけではないが、2人が特別な関係同士なのは変わらないようで、廊下でよく話をしているのを見かける。
「遥くんったら数学は得意なのに英語はさっぱりね」とか。
「神崎先生は英語以外できねぇだろ」とか。
息ぴったりに話す姿はとても楽しそうで、まるで兄弟みたい。
まるで、昔のわたしと蒼ちゃんを見ているようだった。
季節は変わっても、わたしと蒼ちゃんの関係は相変わらず何ひとつ変わっていない。
わたしが蒼ちゃんに対する気持ちだって1ミリの変化もなかった。
ううん、わたしが変えようとしなかったのかもしれない。
遥にあんな偉そうなこと言っておきながらも、結局は勇気がでないんだ。