「・・・なん?」
明らかに暗くなった理紗を見て、ナオは不審なものでも見るような目つきで理紗を見つめた。
戸惑ったように視線をあちらこちらに泳がせて、なんもないと呟く理紗。
それでも、ナオの心のざわつきは治まらなかった。
「な、なんなん・・・なんか隠してるやろ?教えてや、なあ、理紗。」
嫌な予感でもするように、胸がざわざわとざわつく。
ナオは、理紗がとんでもないことを隠しているような気がしてならなかった。
「あ、あんなあ・・・。」
ナオの身を乗り出したような体勢に、追い詰められた理紗は重い口を開いた。
重々しく並べられた言葉は、徐々にナオの表情から明るさを奪っていってしまう気がして、理紗は気が引けた。
「そいつ、たぶんな・・・相羽蒼汰言うねん・・・。、ほんでな・・・。」
「ほぉー!相羽蒼汰言うねんやーっ!ほんまやねんけ?!ほんま!?」
興奮したように何度も“相羽蒼汰”を口にする彼女に、理紗は圧倒されながらもうんと頷く。
「あんな・・・ほんでな・・・、」
「なんで知ってん?!ねえ、なんで?!」
「こ、ここの学校やん・・・、一年やで。」
満面の笑みを浮かべたナオは、またも理紗の言葉を遮って話を進める。
そこで昼休みの終了を告げる予鈴のチャイムが鳴った。
駆け足で中庭から校舎へと入って行こうとする彼女の背中を見つめながら、理紗は開きかけた口を閉じた。
そして、はやくはやくと急かすナオに駆け寄って、二人で教室へと向かった。