「あーあー、ごめんて。だからこっち向きー。」

宥めるように、理紗はナオの髪の毛を撫でながらゆっくりとした口調で言う。

理紗の素直な態度に、ナオは少しだけ機嫌をよくすると、そのままの体勢で言った。


「もっと感情込めな!」

「ごめんなあ?理紗が悪かってん。」

「もっと!敬語やろ?!そこフツー!」

「申し訳ありません。ナオ、許してください。」

「ナオ様やろ!“様”!」

「いい加減にしーやっ」


バシッとカラになった紙パックで、理紗は思い切りナオの後頭部を叩いた。

それでもナオは、満足げな顔をしてこちらを振り向く。


やっとか・・・。

疲れたようにため息を吐くと、理紗はふっと心の中でそう思った。

「で?なに?」

「そのコンビニって、どこ?」

「え?うちの近くの駅の向こう側のコンビニ。ローソンやで。」

「・・・・その子、もしかしてシルバーのネックレスつけてへんかった?」

「うん、つけてた。あんな、なんや指輪みとうな形しとってん。でも、ごっつ綺麗やったで!盗みたくなるくらい!」

そこまで言うと、ナオはきらきらと目を輝かせながら手を握った。

正反対に、理紗の表情はさっと雲がかかったように曇る。